体験
クロームキャストが届いた!
これにて我が家のIoT化は一歩前進したのである。
「ねー、グーグル。テレビをつけて」
「はい、テレビをオンにします」
時代の最先端に立った気になり僕は大変満足した。この話を職場でしたところ「A Iに魂を売っている」と前時代的な指摘をされた。なんならこちとらマイクロチップだって身体に埋め込んでやる所存ですけどね!
そして、気づく。
プロジェクターの存在を意識の埒外に追いやっていたことに。
存外、中身の分かっている包みを開けるのは億劫だ。きっと組み立てだの説明書を読むことだのがその億劫のトリガーになっているのだろう。
包みを開け、寝室に設置する。なんせ安物なので細かい設定ができなく、ちょうどいい映り方を得るために部屋のあちこちに移設して四苦八苦する。
壁に穴を開けて置くための台をつけたいと言ったら妻に睨まれた。
そうして、何とか妥協できる場所を見つけた。後々わかることだが、ポップインアラジンならこんな苦労は一切なかった。
次はダイニングにあるテレビからクロームキャストを引っこ抜いた。これにて我が家のIoT化は一歩後退したのである。クロームキャストをふたつ買う金はない。
プロジェクターに刺す。
おお、映った。感動の瞬間である。
ただの白い壁に映しているのでテレビに較べると画質は落ちるが、それと引き換えに得られるこのでっかい画面と特別感で十分満たされる。
これで寝室にテレビを置く理由はなくなった。
夢のプロジェクターライフが始まったのである。
ーーこれはきっと僕だけではないはずだ。
意外と使わない。
そもそも寝室は寝る部屋であって映画を見る部屋ではないのだ。自明である。
そして、一念発起してわざわざ寝室に行って映画を見ると高確率で寝る。だって寝室なんだもの。
大体がテレビの方が起動が早くシームレスに見たいものに辿り着けるのだ。
かくして、テレビによって主戦場を追われた我が家のプロジェクターは棚の上で埃を被ることが多くなる。それは紛う方なき敗者の姿だった。
そして、積み上がった埃のせいーーと言いたくはないが、程なくしてたまに使った時に画面の中に黒い影が映り込むようになる。
色々調べたが直るものではなくそもそも安物なのだから仕方がないという身も蓋もない結論に辿り着いた。
こうして、僕のプロジェクター熱はしばらく冷めることとなった。
そして、ある時、何気なく見ていたテレビ番組の中で明石家さんまさんがゲストから誕生日プレゼントとしてポップインアラジンなるプロジェクターをプレゼントされる場面を見た。
この場面は僕の記憶の片隅でしばらく眠り続けることになる。「でもお高いんでしょ」とラベリングされた箱の中に封印されたまま。
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